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第005号 『編集者に「うん、やりましょう!」といわせる企画とは?』
         〜その探し方と見分け方:入り口手前編
■探し方その1 売れ筋テーマから


こんにちは。前回楽をして味を占めた編集兼執筆の本多泰輔です。

企画の探し方は、第2号のSさん、第3号のAさんも触れてくれましたが、まあ、とりあえずわかりやすいところから、もう一度見直していきましょう。

それでは、まず「いま売れてる本と同じテーマで出せば、ハズレはなかろう」という、手堅いというか安直というか、もっともポピュラーな手法からまいります。


■近年の売れ筋テーマって?


この4〜5年、売れ続けているビジネス書のテーマ、そのキーワードは何でしょう。IT?成果主義?年金?ブー・・・。

「頭」、または「脳」です。最近では、これに「話し方」、「コミュニケーション」が加わります。「脳」は、かなりロングなテーマで、10年前からさまざまなヒット本となって出ています。

養老孟司『唯脳論』に始まり春山茂雄『脳内革命』、一昨年再び養老孟司『ばかの壁』などなど。

「話し方」は4〜5年前から少しずつベストに現れ始め、最近では両者合体の『頭のいい人、悪い人の話し方』(樋口裕一著、PHP新書)や『話す力が面白いほどつく本』(櫻井弘、三笠書房知的生きかた文庫)がベストセラー上位を続けています。

「話し方」「コミュニケーション」は「日本語ブーム」とも無縁ではないでしょうし、「脳」はスピリチュアル(精神世界)ともパラレルな相乗効果を果たしていると思われます。

この他にも注目のテーマはありますが、この流行廃りの激しい時代に、5年以上頑張っているテーマは上記二つに収斂するんじゃないでしょうか。

こんなデータがあります。厚生労働省や三菱総合研究所の調べによると、企業が新卒者に求めるスキルのトップはコミュニケーション能力で、採用の最重要視事項です。

中途採用でも専門知識・技能に次いで求められているのがコミュニケーション能力です(東京商工会議所調べ)。

私、恥ずかしながら「なんでいまさら話し方なんか売れてるんだろう?」と思っていたのですが、このデータを見てやっと売れてる理由がわかりました。

話し方をご専門にしているかたがた、『頭のよいコミュニケーションのとり方』『頭のよい人の聞き方、話し方』、または『頭がよくなる話し方』(そんなのあるんだろうか)なんてのいかがですか?


■どこで探すの?売れ筋テーマ


売れ筋か、そうでないかを一般の人が見分けるためには、小まめに本屋さんへ通い続けることが基本であり、決め手でしょう。

私のところへ出版のご相談に来るかたのなかで、ときどき「本を読まない」というかたがおられ、仰天させられます。

ご専門分野の本、すなわち類書は読んでいるでしょうと聞くと、「私の考えと違うから読まない」と。

もはや呆然。

本を読まない人は、当然本屋さんに行きませんから、企画もへったくれもございません。

はっきり言いますと、本を読まない人に本は書けません。

本屋さんへ立ち寄り、ビジネス書または、ご自身の専門分野の棚の周辺を半年くらい見続ければ、なにが売れ筋で、どれがキワモノか自然に見分けがつくようになります。

本屋さんへ行く癖がつけば、ついつい何冊か買ってしまうでしょうから出版業界としてもありがたいお話です。

アマゾン等ネットの書店は、比較的データが取りやすいのですが、残念ながら鵜呑みにできない情報もありますので、やはり情報は昔ながらの基本、足で稼ぐべきでしょう。

最近の編集者は、なにかってえとネットで調べようとしますが、若えくせに楽すんじゃねえ!と機会があったら言ってあげてください。

専門家(出版社)向けには、週単位で売行きデータを出してくれるサービスもありますが、お金もかかりますし、そこまでやっても編集部から大した企画が出てこないという現状からいっても、お近くのちょっと大きめの本屋さんに行けば十分でしょう。飽きたらCDも買えますし。


■名人芸、古書店でネタを探す!


最近のベストセラーならみんなが知っているから競争率が高い。穴場はないのか、という風俗に通うオヤジのような人には、古書から企画を発掘するという玄人技があります。

ただし、骨董品の目利きと同じくキャリアが必要です。

昔の編集者は、企画につまると古書店街に出かけたのだとコラムニストの故・山本夏彦氏が書いていました。

企画というのはリサイクルされる。昔、ブームとなったテーマが装いを改め、再びベストセラーになることはめずらしくない、のだそうです。

ホンマかいなとちょっと調べました。

さきほど、「脳」だ「頭」だと申し上げましたが、昭和34年に『頭脳』という本が、35年『頭のよくなる本』(いずれも林髞、光文社)が、ベストセラーの上位を占め、昭和42年には『頭の体操』1・2・3(多湖輝、光文社!)がベストセラーを席巻していますね。

なるほど。ホントだ。

その他では、3年ほど前に『儲けのからくり』(三笠書房)という本が売れましたが、遡ること約30年前の昭和45年に『原価のからくり』という本が、年間ベストセラーの9位に入ってますね。

ざっと30年周期のリサイクルでしょうか。

ということで、いまから30年前のベストセラーを見ると、『ノストラダムスの大予言』(五島勉、祥伝社)、『やせる健康法』(中村鉱一、KKベストセラーズ)、『韓国からの通信』おお!韓流!(T・K生、岩波書店)、『老春謳歌』(御木徳近、芸術生活社)どれかいけそうでしょうか。

『やせる健康法』と『老春謳歌』など、そのまんまパクって企画書にしても通りそうですよ。

とりあえずお近くに古書の青空市があったら、早速行ってみましょう。また、古書から企画を拾うのと合わせ技で、昔の新聞広告を丹念に検索するという方法もあります。

まあ、この作業は、時間さえあればけっこう面白い発見もあって楽しめますよ。


■社会の変化がビジネス書のチャンス


それにしても、最近ビジネス書は売れないという業界人が多い。私の記憶では、ほぼ毎年同じことを聞いている気がします。

過去、ビジネス書が売れたときはありました。大体、法律やシステムが変わるタイミングでビジネス書は売れます。

昭和50年代半ばからのコンピュータ、ベンチャー、TQC、60年代のロジスティックス、平成元年の消費税、株、平成5年以降しばらくはマルチメディア、ニューメディア、インターネット、最近ではITにオモテとウラの成果主義と思いつくだけでも10指に余
ります。

ただし、昭和50年代と平成5年以降を較べますと、売れる期間が著しく短くなりました。よって部数が大して伸びないという恨みがあります(消費税のように前年の暮から3月までの短期決戦もありましたが)。

ですから、次々と新しいテーマが求められます。著者にとってはチャンスの山ですね。山、小さいですけどね。

今ですと、「個人情報保護法」ですか。でも上記に較べるといまいちパッとしませんね。

こうした「時のテーマ」が企画になるのは当然です。お得意の分野がブームになり一躍メジャーな著者になったラッキーなかたも大勢います。

この種の本は早い者勝ちです。ブームの渦中に応用編をあれこれ考えてもあまり良い結果は出ません。ブームの前に準備しておきましょう。


■理論やデータでは考えない編集者


どんな優れた出版企画も編集者を説き伏せられなければ、自費出版以外に陽の目を見る機会はありません。

編集者の習性には「売れた理由は考えない」という驚くべき傾向があります。編集のみならず、ほぼ出版界の特性ともいえます。

そういう相手を前にしてデータや理論を駆使したプレゼンを展開しても、はっきり言うと馬の耳に念仏。おおかた報われない努力です。

そう、彼らは一律理系に弱い。さらにはコンプレックスを持っている。

意思決定要因は「売れる気がする」「自分が面白いと思うんだから読者もそう思うはずだ」という、理由なき判断に由来します。唯一の理由は「同じテーマの本が売れている」くらいでしょうか。

あなたの企画書を前にしているのはそういう人たちなのです(既出のSさんやAさんは例外、Sさんは業界には稀な3次方程式まで解ける人です)。

では、どうやって知識がないわりに屈折している編集者をたぶらかす・・・いや啓発すれば良いのでしょうか。

ずばり、キーワードは「売れる」と「一目でわかる」。


■「売れる」理由はビジュアルで示す


「時のテーマ」はまず業界紙や雑誌等が必ず先行しますので、企画書にそれらのコピーを添付すれば、編集者はそれで理解します。理系には弱くても「売れそう」なものへの閃きは早いのです。

売れてる事実や実物(コピー)を示す。どのくらい売れそうなのか、業界の注目度や海外でポピュラーになっている様を絵や写真で示す、図解する工夫をいたしましょう。打率はグーンと上がります。

「売れそう」と眼で見てそう思わせれば、企画はほぼ通ったも同然です。

マラソン解説者の増田明美さんとの結婚で有名になった公認会計士の井脇祐人氏の著書に『現代老後の基礎知識』(新潮新書)というのがあります。

シルバー市場の有望さは周知の通りですから、そこにこのタイトルで企画を出されたらどこの版元でも通しますよね。

タイトルだけしか書いてなくても十分通ります。そのくらいタイトルが内容もイメージも含んでいる例です。

『現代用語の基礎知識』(自由国民社)のパクリと言えばパクリですが、さすが大手老舗版元、しぶい!と感心いたしました。

これがキーワードの「一目でわかる」ですね。
長々説明の要らない省エネタイプで、とっても喜ばれる企画書です。


■まとめ


(1)企画は販売現場にあり、リアル書店に通って鑑定眼を磨こう!

(2)温故知新、企画はリサイクル可能、古書店に通ってヒットを探そう!

(3)編集者には一目でわかる売れそうな企画を出そう!


今回は企画の探し方、見分け方、その1でした。まだ「入り口手前編」ですので、実際のところ、においをかいだ程度ですかね。

企画の探し方は、永遠のテーマですので、このあともその2、その3・・・、その10くらいまで続きますが、続けると飽きられるので次回はテーマを替えます。

で、来週はちょっと物議をかもしそうなやつを。題して、

「業界のアンタッチャブル、禁断の出版、ブックマーケティング その1」

意外と深く出版界に浸透しているこの手法。知らない人も知ってる人も、あっと驚く事実をお教えしますよ。

ふっふっふ・・・(ひょっとしたら神田川に浮かぶかも)。



《編集後記》 


今回は「企画」についてのテーマでした。やはり本屋さんには、売れる企画のヒントが眠っているようですね。。。ただ漫然と眺めるだけでなく、ご自身が出版するテーマを探すつもりでじっくり見ると、意外な発見があるかもしれません。では、来週号もご期待ください!(発行者:樋笠)



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出版プロデューサー/本多 泰輔(ほんだ たいすけ)

プロデューサー・本多泰輔氏は、ビジネス出版社(版元)で20数年の経験をもつベテラン編集者から、出版支援プロデューサーに転身した人物です。その考え方について詳しく知りたい方は、本多氏編集のメールマガジン『コンサル出版フォーラム!本はあなたをメジャーにする』のバックナンバーをご一読下さい。








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