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第012号 『編集者が思わず“やりましょう!”と言ってしまう
             出版企画書のつくり方(実践編)』

  ■企画書は薄いほどよい


おはようございます。

まだ12号なのにテーマが2巡目となってしまい、やはり思いつきで予告するのはよくないなと反省している本多泰輔です。

それと前に書いたことを忘れているので、いつか同じことを書くかもしれません。さらに恐ろしいのは、読者もそれに気づかないかもしれないということです。

前に「入り口手前編」(・・・だったかな)でやったことと重複しないように、以下注意しながら書いていきます。

そう言っていきなり重複しますが

「企画書はタイトル一行でもよい。加えるとすれば目次と略歴、本文の見本を一部(2〜3ページ分)、企画の趣旨、ねらいなんぞは、なくてもわかるほうがよい」

と前にも書きました。
おさらいなので簡潔に理由を記します。


<理由>

1.ページが多いと編集者が「後にしよう」思い、時間の経過と共に忘れられる

2.企画書がわかりにくいのに、原稿がわかりやすいはずないと思われる


■わかりやすいと何が得か


企画書が薄くて、わかりやすいと得するのは「すぐに読まれるから結論が早い」ことです。

薄い企画書だから採用されるというわけではありません。当然ながら採用されるかどうかは、やはりテーマです。

また、採用されなくてもどこが悪いのか、何が足りないのか、建設的な意見を聞くことが出来ます。

少なくとも「いまから読むところです」と言われて何ヶ月もなしのつぶてを食らうことはありません。せっかくの好企画が、ぶ厚いために埋没してしまうのは残念なことです。

また、企画書がわかりやすと「この著者はできる」と編集者は期待します。

ところで、世の中不思議なことに企画書だけはすごくいい人がいます。いざ書いてもらうとあんまり面白くないのですが、やはり企画書がいいもんで次々と出版社を渡り歩いていきます。

そのうち何年かすると、経験は人をつくるのか、いつの間にかいい原稿を書くようになっていたりします。

ま、それはともかく、ここで「わかりやすい企画書」とは、どんなものなのかについてお話しましょう。


■企画書の命、仮タイトル


モデル例をお見せすれば話は早い(早すぎてがっかりするかもしれません、なにせ簡単なわけですから)のですけど、(幸いなことに)メルマガでは画像をお見せできないので、構成について説明します。


<仮タイトルを最初に大きく表記しよう>

わかりやすいか、わかりにくいかの決め手は、ほとんど仮タイトルにかかっています。

『経済のニュースが面白いほどわかる本』というベストセラーがありました。いまでも小学館から続編が出ています。経済関係の本で100万部を超えるという20世紀の金字塔を打ち立てた本です。

それまでにも経済解説の本は、硬軟取り混ぜてありましたが、この本ほどねらいがシャープにタイトルに現れている本は稀です。

「ニュースに出てくる経済のことくらい知らなくちゃいけない」という読者の強迫観念を著しくくすぐりました。

この本は、企画の段階からの著者のイメージが固まっていたそうですから、企画書もこのタイトルだったのでしょう。

具体的にタイトルを較べてみましょう。企画書が次の二種類の仮タイトルであがってきたとしたら、どうですか。


仮タイトル1.『経済のニュースが面白いほどわかる本』

仮タイトル2.『わかりやすい身近な経済入門』(架空です。実在してもその本とは関係ありません)


どちらも経済のことをわかりやすく解説することをねらいとした本だというのはわかります。

「ニュースに出てくる経済の話」は、すなわち「身近な経済」ですが、「経済のニュース」としたところが白眉です。

これはセンスですね。

センスに自信のない方は、普段からこれはと思ったことばがあったらメモしておきましょう。ただし使うときは上手にやらないとモーニング娘。のナッチのようになっちまいますからご注意を。

パクリにも技術と経験がいるのです。ナッチもよい編集がついてれば反省会見などしなくてすんだでしょうに。話が横にそれました。

加えて「経済入門」では経済学の教科書的印象を持ちますよね。

結果論ですからいえることですが、『経済のニュースが面白いほどわかる本』には次のようなイメージがありませんか。


○ニュースレベルの経済なんだから、そんなに複雑なことは書かれていまい

○ニュースに出てくる経済のことなんだから教養として必要

○ニュースレベルの経済を知っとけば世間で困らない


「1.2どっちもいっしょだよ」という方がいたら、メルマガはここで終わりですが、要するに企画書の仮タイトルは、本の内容をイメージさせるものが望ましいのです。

すなわち、仮タイトルの条件は

1.テーマを明快に示す

2.内容をイメージさせる

3.センスがよい

そういう仮タイトルをつけることができたら、次は編集者が羊頭狗肉ではないかと余計な疑いを持たないよう、プロット(仮目次)を見せて安心させてあげましょう。


■上手い表現が見つからないときは


モデル例ですから、きれいにまとまったタイトルをあげました。

しかし、実際は書きたいテーマは明確だが、適当な表現が出来ない、パクるにも類書がない、と悩むケースが多いと思います。

そのときは、条件の3番を捨てましょう。

あくまで仮タイトルなんですから、何もまとめるために苦労する必要はありません。まとまらなかったら説明的にズラズラと長いタイトルをつけておけばよいのです。

センスを疑われることは甘受しましょう。
大体コピーセンスのある人は、編集部にだってめったにいません。

センスがいいと錯覚しているのはたくさんいますが。

変にコピーライトの美学にこだわって、わけのわからないタイトルをつけるくらいなら、体裁が悪くても書きたいテーマと内容の特徴が伝わる方が重要です。

しかし『さおだけ屋はなぜ潰れないのか』なんてのも売れてますからねえ。大手老舗が会計の本を出すご時勢ですから、陽の目を見たのでしょうな。

出版の世界は奥が深い。

ともかくも、企画書段階ではわかりやすいほうがよいのは間違いありません。

『団塊の世代が大量リタイアする時代に、高齢者でもできるネットを使った「一人ビジネス」の立ち上げ方』という長〜い仮タイトルでも、出版するときには『定年起業』というふうになるかもしれません。

タイトルの決定権は出版社にありますから、企画段階で呻吟することはありません。

■これなら通る企画書の例

※実在の人物、企業、企画とは関係ありません


<その1>
仮タイトルだけで一目瞭然、説明も資料も要らないケース


★サブ ライフドアの資金源と戦略の真相を元片腕が明かす

☆仮タイトル「ホリエの秘 密」

「仮目次」

・ライフドア、意外な資金源
・ホリエ、陰の指南役
・ホリエ流のルーツは故郷にあった
   ・
   ・
   ・
「著者略歴」
   ・
   ・
   ・

いまならどこの版元でも通るでしょう。ただし、元片腕以外に書ける人はいません。元片腕の方、いらっしゃいましたら早めに企画を出版社に持ち込みましょう。

一月で出さなければいけませんが、初版印税はでかいと思います。


<その2>
少し説明資料を要する例

☆仮タイトル「どんなときでも上手くいく頭の良いことばづかい」


「仮目次」

・ことばは物事をスムーズに運ぶため進化した
・事態の悪化を回避することばづかい
・周りをリードするためのことばづかい
・自分を上手にアピールすることばづかい
・年上の部下、若い上司とうまくやるためのことばづかい
   ・
   ・
「著者略歴」
   ・
   ・
   ・
「添付資料」

新卒、中途採用者に求められるスキルの筆頭にコミュニケーションがあげられていることを示すデータ(経済団体、厚労省等の資料)

類書の売れ行きを示す資料(雑誌等にある書店ベストセラー)


日本語や話し方の本が売れているのは、ビジネス書ならどこの版元も周知ですが、一応モデル例ですのでご容赦ください。

この企画書のもう一つの重要なポイントは、すでに同様な本を最近出版したような版元には提案しないということですね。


■まとめ


結局、企画書の書き方は補助的な役割しか果たせません。

企画の命は、つまるところの「書こうとするテーマ」か、あるいは「書く人」そのものですから。

東京ディズニーランドやトヨタなど、誰でも知っているところの内部にいた人間であれば、ある種本人がテーマになり得ます。

あとは、日夜ユニークなテーマとユニークな表現方法を求めて、研鑽とパクリと「自己の棚卸」を怠らないことでしょうか。

そんなわけで次回は、定例の樋笠社長が出張るトップインタビューですね。どんな話になるのでしょうか。

多分まだ取材もしてないでしょうから、原稿が締め切りに間に合うのか、そもそも取材に協力してくれる方がいるのか、いまから期待でワクワクします。

みなさんもお楽しみに。

 

《編集後記》

先週の予告、私が間違っていました。ごめんなさい。出版に成功したコンサルタントは来週お届けします。本多さんお察しの通り、取材はこれからなんですよ。。。昔、週刊雑誌の仕事をしていた関係か、どうも締め切り間際にならないと着手できない性格です。本多さんに言わせれば、悪い著者の筆頭(締切りがアテにならない)で
しょうか。反省。。。

さて、今週はタイトルの通り、企画書のお話でした。薄いほうが良いという常識が一般に認知されて、原稿ごと出版社に送りつける人が減るといいですね。。。業界のためにも (発行者:樋笠)



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出版プロデューサー/本多 泰輔(ほんだ たいすけ)

プロデューサー・本多泰輔氏は、ビジネス出版社(版元)で20数年の経験をもつベテラン編集者から、出版支援プロデューサーに転身した人物です。その考え方について詳しく知りたい方は、本多氏編集のメールマガジン『コンサル出版フォーラム!本はあなたをメジャーにする』のバックナンバーをご一読下さい。








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