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第016号 『仕事の中から本のネタを拾う
   仕事しているうちに一冊出来上がる、一挙両得な方法』


■某県立図書館の風景


おはようございます。
本多泰輔です。

このところ事務所移転に伴う諸般の事情により、厚かましくも公共の図書館を仕事場がわりにしておりました。使ってみると図書館って意外に便利です。

まず、この某県立図書館はパソコン持込OK。パソコン専用の席まで用意され電源一日中使い放題。蔵書読み放題。

インターネットは使えませんが、資料は周囲に満ち溢れているのですから、いつでも原典に精確に照合できます。

書架に埋め尽くされた古今の書物の間を歩けば、ほぼ5メートル歩くたびに企画が浮かぶ。はっきり言って天国です。

参考資料は文字通り山ほどあるし、仕事に飽きたら趣味と気分に応じて適当な本を選び読んでいてもだれも文句を言わないし、事務所なんかなくてもいいやという気持ちになっております。

そうして公共の場を私物化しているうしろめたさにより、最初のうちは周囲に遠慮して隅っこのほうでこそこそと原稿を打ち込んでいたのですが、慣れてくるにしたがい周囲を見渡しているといくつか気づくことがありました。

以下その発見です。


(1)司法試験の合格率が低いわけ

利用者には、司法試験の勉強のためか、法律関係の受験参考書を持ち込んでいる人が多い。

そして彼らを見ていると勉強している時間より寝ている時間の方が3倍は長い。あれでは合格はおぼつくまい。

司法試験合格率の低さの理由を垣間見ました。寝るなら家で寝ろと言いたい。


(2)実証された「書物とトイレの法則」

「書店に行くと便意をもよおす」という説があります。

作家の浅田次郎氏によると、社会科学や哲学、医学、理工書など難しい本の売り場に行くほど、その傾向は強いとのこと。図書館はまさにぴったり当てはまる場所。

それを証明するようにいつ某県立図書館のトイレに行っても必ず「大」の使用者がいる。二つ並んだ個室が両者とも空き部屋だったことがありません。

来館者数は大して数でもないのに、トイレの個室は今日も賑わうちなみに私は抗体があるせいか、上記法則には当てはまりません


まあ、こんなのが仕事の中にある話のネタかといわれるとお恥ずかしいですが、少し観察するだけでかんたんに発見できるということでございます。


■仕事の中にある宝の山


仕事から本のネタを拾ったという例では『社会人として大切なことはみんなディズニーランドで教わった』(香取貴信著、こう書房)がそのものズバリですね。

ディズニーランドで働くアルバイトは大勢いますし、ディズニーのサービスマニュアル、ノウハウを扱ったが本も数多くありますが、ベストセラー著者となったのは香取氏ひとりです。

ひと昔前までは、マクドナルドのマニュアル本がもてはやされましたが、香取氏の本は働く感動を織り込んだことで、かつてのマクドマニュアル本よりも一頭抜け出ています。

もうひとつ。

先週号にもご登場いただいたコンサルタントの田中さんは、飲食・サービス業のチェーン店の指導をしています。

彼が指導しているある焼き鳥居酒屋では、アルバイトを含め出勤者は毎日日報をつけています。

その中に収められているアルバイトの「あやちゃん」の日誌はとても感動的で、田中さんの著書でも紹介されています。

「あやちゃん」はアメリカに音楽の勉強しに行ってしまいましたので、無断で著作権を侵害しないよう粗筋だけ抜粋します。

18歳フリーターの「あやちゃん」は、常連のお客さんたちへ「いらっしゃいませ」の挨拶に加え、一言つけ加えるようにしています。

ある日サラリーマンのAさんが、疲れた様子で来店しました。「あやちゃん」が声をかけると「仕事で疲れてるけど、あやちゃんの元気な声を聞いてると自分も元気になる気がする」と答えてくれました。

そして、その日「あやちゃん」は日誌にこう記しました。

「あやちゃんの声を聞くと元気になる人がいるなら、明日も元気な声でお客さんに話しかけよう。お店に来て、あやちゃんの声で元気になって帰ってくれるなら、あやちゃんもうれしい」

本当はもっと長い文ですが、これを読んだとき本多のおじさんは泣けました。ディズニーランドじゃなくても大事なことは学べる。「あやちゃん」感動をありがとう。

田中さんは、こうした現場のお話を指導先で拾い集めて一冊の本にまとめています。

ところで、ディズニーランドの香取さんも焼き鳥チェーンの「あやちゃん」も実はもう職場にはいないのですね。

「あやちゃん」は音楽の勉強でアメリカへ。
香取さんはコンサルタントのようなことをしています。

なぜ、感動の職場を辞めちゃうのでしょう。
本稿のテーマではありませんが、疑問でなりません。


■常に記録する習慣を


コンサルタントは、話しことばの世界で生きる職業です。講演にせよ指導にせよ話しことばというのは流れるもの、流れて留まらない世界ですが、本は記録の世界です。

まず記録すること、メモする習慣をつけましょう。

そうすると電車の中吊り、駅のポスター、ニュースの一言、指導先のトップとの雑談、社員の感想、至るところに貴重なネタが散りばめられていることがすぐに実感できます。

次に「聞く」ことに軸足を置いてみましょう。

コンサルタントは、「話す」ことが仕事ですから指導することばかりに気をとられ、ややもすると相手に話をさせる機会を与えない傾向があります。

それではネタは集まりません。ちょっと聞く側に回ってみましょう。プロのコンサルタントがメモを取りながら真剣に聞いてくれれば、相手は感激し、さらに一生懸命いろいろなことを教えてくれます。

社内の事情や業務の問題点、果てはどうすれば改善できるかまで教えてくれて、ネタは拾えるし、信頼まで勝ち取れるというけっこうなお得な方法です。

指導先でも研修先でも、相手の話をメモにしておけば、いずれ本を書くときに使えるネタは必ずそこにあります。


■メモは上手に整理


メモはとっても手帳に3年間収められたままという状態では、有効活用は期待できません。
メモはとったらすぐに分類して整理しておきましょう。

その際、人事労務とか生産管理とか、図書館の蔵書分類のような整理の仕方はいただけません。

「社長のちょっといい話」とか「やる気にさせるひと言」とか、自分でも読みたくなるようなテーマで分類しましょう。

だいたい自分の関心が向かない話をメモするわけがないのですから、メモした段階で分類は決まってくるはずです。

メモした日付と場所と相手の名前は、できるだけ残しておいたほうが後々便利です。

「ポストイット」のような糊つきメモ用紙を使えば、あとで分類整理するとき便利です。「コンサルティング日誌」というようなものをつけている人はいるでしょうか。

指導先別、あるいは研修・セミナー別につけておくと、本業にも執筆にも役に立つと思います。まさに仕事しながら本一冊出来上がる早道です。

また、過去の仕事で印象深いことや何らかの転機となったことを遡って、思い出したときにメモしておくのも大事です。

やはり長年やってきたことにこそ、財宝は埋もれているわけですから、そこに至る地図こそメモの積み重ねといえるでしょう。

昔の仕事で記録すべきことを整理し、組み立て直すことができれば、それがまず第一冊目の著書になりうるでしょう。

こうした経験・ノウハウの棚卸も著書のためばかりでなく、コンサルティングにもかなり役に立つと思います。


■まとめ


「仕事の中から本のネタを拾う」ということは、つまりは目についたこと、気がついたこと、関心・感動したことをこまめにメモしようということです。

実際、新聞や雑誌の記事を見たり、インターネットで調べるよりも、業界のことはそこに従事している人に聞いたほうが真相がわかります。

トップの何気ないひと言に凡百のノウハウ本を超える真理があったりします。

コンサルタントはそうした業界の深部にいる仕事をしているのですから、本のネタなど本来、集中豪雨のように次々と降ってくるはずです。

素材はあるのですから、あとは整理し組み立てる企画力があれば、読者は必ずついてきます。さあ、明日からさっそくメモ用紙を懐に。

次週はコンサルジェント社長自らインタビューに臨む「出版体験談」ですね。お楽しみに。

 

《編集後記》

体験を記録することから、出版デビューの道が開ける。今日のテーマはシンプルですが、きわめて現実的なアドバイスだったと思います。コンサルタントは見えないサービスを、見えるように表現して買ってもらうわけですから、日常の仕事を記録して、整理して、次のお客さんにわかってもらうよう表現することが、すべての出発点と感じます。(発行者:樋笠)


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出版プロデューサー/本多 泰輔(ほんだ たいすけ)

プロデューサー・本多泰輔氏は、ビジネス出版社(版元)で20数年の経験をもつベテラン編集者から、出版支援プロデューサーに転身した人物です。その考え方について詳しく知りたい方は、本多氏編集のメールマガジン『コンサル出版フォーラム!本はあなたをメジャーにする』のバックナンバーをご一読下さい。








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