おはようございます。
毎年夏になると「北海道か軽井沢で仕事がしたいなあ」と思う本多泰輔です。
冬になると「沖縄で仕事がしたいなあ」と思います。
さて、環境問題に目覚めたか、電気代をケチるためなのか、家主のお達しによる控えめな冷房の中、安い扇風機を頼りに今回もナイスな情報をお届けします。
あ〜早くビール飲みに行きたい。
というわけで海外、いまなら涼しいアラスカかカナダに行きたいところですが、ビジネス書の核である経済・経営学は、本家がアメリカですから、ほとんどネタはアメリカ産。
いまどきは、航空券を買って飛んでいかなくてもインターネットで丹念に検索すれば、さまざまな分野の企画ネタにヒットします。
もちろん時間とお金に余裕のあるかたは直接行ってみてください。
ついでにアメリカ名物サクセスセミナーも見物しておくとよいと思います。この種のセミナーもやっぱりアメリカが本家だったことを思い知り、「この人たち、そんなにお金が大事なの?」と、自国のことは棚に挙げいろいろ考えさせられます。
■どうして海外
なんでわざわざ企画のヒントを海外に求めなければならないのか。
国内では、各出版社みんながお互いちょっとでも売れた本があるとすぐに真似してつくるので、一種閉塞状態といいますか、三すくみ状態にあるのですね。お互いにパクり合っているためどこも同じよう企画しか出てきません。
こうした中でスキマを突くというのは、なかなか根気の要る作業です。しかも、類書のない企画には、依然二の足を踏む傾向が編集部にはある。
これは困った。
そうこうしているうちに自己啓発書を中心に翻訳本、つまりアメリカで売れている本を出す版元が登場し成功をおさめました。
サンマークとか草思社などですね。業界で注目し始めたのは7〜8年前のことでしょうか。
どちらもそれ以前から翻訳本は手がけていたのですが、ブレイクしたのはそのあたりだったと思います。
なお、草思社はその後『声に出して読む日本語』(斉藤孝著)という大ヒットもかっ飛ばしております。社風からいえば、日本語のほうがこの版元に合っていますね。
同じ翻訳ものでも、老舗ダイヤモンド社のようにドラッカーの本やシックスシグマ、プロジェクトマネジメントといったベタなビジネス書はいまひとつ伸びませんでした。『ザ・ゴール』は売れましたが。
実は本家アメリカでも自己啓発もののほうがヒットを飛ばしているのですから、当然かもしれません。ところで、わがメルマガのめざすところは、あくまで自分自身の著書の出版であり、翻訳ではありません。
翻訳でなければ、どうやって海外の作品を活用するのか。
つまり、アメリカで売れてる本の企画だけをパクって自らの原稿をつくるのです。もう少し上品な言い方をすれば、アメリカで出版された本にヒントを得て企画したものを執筆するわけです。
よって英語で書かれた本を一冊すべて読む必要はありません。
日本で書店の棚を見渡して、ぴかりと閃くように、アマゾンのベストセラーを検索しながらこれはと思うテーマを見つければよいのです。
それぞれの専門分野、あるいは経験分野に関する本であれば、何がポイントとして書かれているのかは、翻訳ソフトのめちゃくちゃな日本語でも大筋つかめるでしょう。
必要だったら注文すれば、まあ、一週間もすればお手元に届きます。
■企画をパクる
以前にも、出版の企画は時代を経て、何度も使いまわされているということをご紹介いたしました。
とくにビジネス書の場合、限られた範囲のことがテーマですからリニューアルを含め繰り返しを余儀なくされます。
時代の装いはそれぞれ違いますが、古くは井原西鶴に遡っても成功の原理を求めたり、会計の基本を学ぶことに変わりはありません。
自己啓発書のベストセラー作家は、大正から昭和初期は新渡戸稲造でした。現代は、新渡戸稲造が斉藤一人さんや斉藤孝教授になっているわけです。
企画は、古典を参考にしても海外のものを参考にしてもよいのです。国内は類書で酸欠状態。ここはひとつ視野を広げ海外へと目を向けてみようではありませんか。
ワールドワイドなパクりをやろうというわけです。
海外とはいえ一応実績もあることですから、編集部も落としやすい。しかも、この分野なら企画提出者である著者のほうが圧倒的有利に立ってリードできます。
なんといってもビジネス書の編集者で海外の出版事情に詳しい者に出合うことなど、道を歩いていて隕石にぶつかる確率より少ないですから。
ただし、オリジナルの表現や図表などをパクるとそれは罪になります。あくまでも参考にとどめましょう。
例えば日米のベストセラー『チーズはどこに消えた』をパクったとして『バターはどこに溶けた』を出した出版社が訴えられるということがありました。
ま、普通そこまで神経を尖らせている出版社は日本では稀ですけどね。
いずれにせよデータや図表を勝手に使って名称だけオリジナルにするというのは当然ながらダメです。
著者たるもの、やっぱりフェアでなければいけません。
■アメリカ人は手帳好き
日本でも「夢をかなえる手帳」とか「1億円をめざす手帳」とか、そんなに類書ありませんが手帳もののヒットがあります。
アメリカのサクセスセミナーの講師は、たいてい自分の手帳を掲げ
「みなさん、年収を100万ドルにしたいと思いませんか?わたしのこの手帳には1億ドル分の顧客が・・・」
やら
「わたしはこの手帳だけで10社の経営内容と100社の顧客を管理しています・・・」
とかなんとか、だいたい冒頭でかましますね。
アメリカでも手帳とサクセスにはシブい関係があるのでしょう。
従来、日本では手帳の使いかたをテーマにした場合、スケジュール管理・情報管理を中心に企画していましたし、いまでもそういう企画でつくられる本は年に何点かあります。
手帳とサクセスの組み合わせが見られるようになったのはここ1〜2年ですね。
「夢をかなえる」とか「1億円」とか、手帳とサクセスを結びつけたのは、明らかにアメリカの影響だと思うんですが、版元のかた、あるいは著者のかた、いかがでしょうか。
単独ではパッとしなかった「モーニング娘。」のメンバーが、ユニットを組んでブレイクしたように手帳とサクセスの組み合わせは、今後もヒットメーカーとなると思います。
「3週間でみちがえる人物になる…なんとか手帳」とか「3年間で年収1億円になるための手帳」(これはすでにあったかな…?)とか、企画してみてはいかがでしょう。
■ビジネス書の故郷アメリカ
昭和40年代に、経営実務書といっていたマネジメント関係の本が登場したころは、アメリカの翻訳をまた翻訳したようなものばかりでした。
いまどき「管理の五段階」などといってる人はいないでしょうが、その原理は今日の幹部教育本にもしっかり生きています。
平成に入ってからもFP、BPR、インターネット、6Σ、PM、IT…など、翻訳本であれ日本人が著したものであれ、新しい手法・ツールはすべてアメリカから渡ってきたものというのは疑いない事実です(ISOだけはヨーロッパ標準なので別)。
好むと好まざるとに関わらず、アメリカ追従なのは小泉首相ばかりではありません。
城山三郎が翻訳したベストセラー『ビジネスマンの父から息子へ30通の手紙』(キングスレイ・ウォード著)は名著といわれています。
著者は確かに優良な会社の設立者であり、経営者でしたが、ジャック・ウェルチやビル・ゲイツのような巨大企業のスーパー経営者ではありません。日本でいえば優れた技術を持った中小企業の社長というところでしょうか。
彼の魅力は、豊富なビジネスキャリアと鋭いバランス感覚、良心的な行動規範、息子に対する信頼と愛情、そしてウィットとセンスにあふれる文章。
最後の文章を除けば、日本にも著者と比肩する「ビジネスマンの父」はたくさんいると思います。
わたしは、どうして日本版『ビジネスマンの父から息子へ30通の手紙』が出てこないのか不思議でなりません。
いまも国内470万企業のほとんどは父から息子へ譲られているのですから、日本の企業経営者として伝えることはあるはずです。
アメリカと違って一子相伝、門外不出なのでしょうか。
また700万人の定年退職を間近に控えた人々の中にだって、自分の子供たちへ伝えるべきビジネスマンとして誇りある知恵と経験は蓄えられているでしょう。
ぜひ、ここはひとつ父権を顕わしていただきたいと思います。
子供たちが読むかどうかは不明ですが、父親たちは必ず読みますよ。
■まとめ
最近は日本の出版社でも、海外のブックフェアに出かけたり、出展したりしています。
また、翻訳書もけっこう点数を伸ばしてますから、各社とも海外の書籍に対してはだいぶ関心と情報量を増しているようです。
それでも現実に編集者が海外から企画を拾ってくることは困難を極めます。
まず、専門家じゃないと、テーマが斬新なのかどうかは判断つきかねますし、タイトルとレビューだけ読んでも中味のことがわかりません。
さらに中味を読もうとしても英語が読めません。この傾向は、決定権のある編集長クラスになるほど顕著になります。
やはりこの分野は著者の目に頼るしかないのです。
かといって著者が英語に堪能である必要は、まったくありません。
翻訳するわけじゃないんですから。
「アメリカじゃあいまこういうテーマの本が出ていて、けっこう売れている。だから日本でもこういうテーマの本を出しましょう」と、日本語で書いた企画書を出すわけです。
すると編集者は「アメリカで売れてんなら日本でも売れるかも」と思うわけで、「本当に売れてるか調べてみよう」などと出来もしないことを考えたりする者はいません。
適当に説得力のあるデータを付けておけば編集長もイチコロです。
ヒマなときには、試しに“Yahoo USA”を開いてみてベストセラーを眺めてみましょう。いい拾い物があるかもしれません。
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