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第027号 『いまビジネス書編集部が考えている
         (または迷っている)年末から来年の出版企画』

■予告してから後悔


おはようございます。

日本全国夏らしくなってきましたね。
みなさんリゾート地でこれをお読みですか?

高級避暑地、軽井沢までは行けず、群馬県と長野県の境目にある山中でこれを執筆している本多泰輔です。とても静かです。夜は5キロ四方に灯火が見えません。

前回、思いつきで「編集部が考えている年末から来年の出版企画」と今号の予告をし、その後各編集部に極秘にメールを飛ばし探りを入れたところ、


○来年はおろか年末のことなどまだ何も考えていない者8名
○いま考えている最中の者5名
○さっさと夏休みに入ってしまった者3名
○来年まで会社が持つかどうかを心配している者1名
○入院中の者1名、
○当面の仕事で気息奄々の者4名(夏休み前ですので)


という惨憺たる有様でした。
考えなしに予告するもんじゃないなと反省しております。

それでも、現在思案中の5名を含め、何人かはこのメルマガに使えそうな答えをくれましたので、ささやかながら予告どおりご報告させていただきます。

中にアット驚く極秘情報もありましたが、メルマガ読者にはあまり関係ない業界情報ですので、これはオフレコとさせていただきます。

また、一社ビジネス書に参入するようですね。それも超大手が。
超大手のかたもこのメルマガ読んでくださいね。

できれば本多にお仕事も!


■いつまで続く「話しかた」


天地開闢以来こんなに「話しかた」の本が売れた年はなかった、と思います。

実際まだ売れてますし、依然新刊の発行も続いています。みんなこんなに長く売れるとは思ってなかったみたいです。

昨年から三笠書房の文庫『話す力が面白いほどつく本』がベストセラーになり、「ああ、そういうこともあるんだ」と思っていたら、PHP研究所が新書『頭がいい人、悪い人の話し方』をかっ飛ばし、「もうねえだろう。終わりだろ」と思っていたら、柳の下は洗いざらい掬うPさんは、続編『頭がいい人、悪い人の言い訳術』で最後のかっぱぎ。

・・・いや、ちょっと表現が下品でした。

当たり前のことですが、この他にもベストセラーに隠れて目立ってはいませんが、そこそこ版数を重ねている「話し方」関係の本は多数あります。

顧みれば、話す・聞くといったコミュニケーション・ジャンルの本は、5年ほど前から少しずつ広がりを見せて来ました。

冒頭掲げた『話す力が面白いほどつく本』もその頃別の版元から単行本として出ており、ミリオンセラーにはならなかったものの、5万部か10万部くらい売れた本でした。

そこそこ売れた本が、文庫になったらミリオンセラー。
文庫化が急進するのもむべなるかな。

前置きが長くなりましたが、この「話しかた」というテーマ、私はもういい加減終わりじゃないかと思っているのですが、来年も続くという編集の人もいます。

匿名を条件にちょっと出てきてもらいましょう。
Tさんどうぞ。


T氏:
「本多のいうとおり、話し方は5年前から動きが出てた。それが去年から今年、文庫・新書で一気に100万部。一方、A4判の単行本でもベストには登場しないが動きはいい。

これは自分の考えだが、話し方の本は英語の本と同じようになるんやないのか。つまり、今後テーマを細分化し切り口を変えながら一定の読者層をつかみ続けるのではないんかと」


えらい肩入れですね。
話し方の本でもハズレはあるみたいですけど。


T氏:「そりゃ当たり前。同じテーマが全部売れるようなら出版社は潰れん。本の顔が悪けりゃ売れるもんも売れへんし。要は企画の切り口と本のつくりよ」


それにしても読者はもう飽きたんじゃないですか。


T氏:「来年はどこの企業も採用を増やして、バブル絶頂期の求人数70万人に迫るといわれているんよ。話し方・聞き方は新人にとって絶対必要。指導する側かてテキストは必要だ」


なるほど合わせて140万人の読者ですか。でもバブルのときに話し方の本が売れたという記憶ないですけど。で、何冊くらい出そうってんですか。


T氏:「企業秘密。そうはいってもおんなじような本は出せんから企画は絞るな」


来年はビジネスシーンで話し方だそうです。
でも続くったって来年の春くらいまでじゃないのかなあ。


■流れは無視できない


2005年が2006年になったからといって、いきなり世間の様子ががらりと変わることはありませんので、前年からの流れは引き続き全体の動きを決定します。

だから話し方ブームという流れは、突然絶たれることはなく来年に
も影響を及ぼすということなのでしょう。

次は「ビジネスメールを書く力が面白いほどつく本」かな。

さて、もうひとつ流れといえば「株」の本があります。株は景気の先行指標といわれますが、「株」の本は株価の先行指標です。

いま多くの人が景気回復を前提に、やがて来る株価の上昇を期待していますので、「株」の本も目白押しです。

そして実際株価が上がれば、また株の本も売れますので来年にかけては、この方面は翳ることはなかろうと思います。株が上がれば。

それではもう一人のTさん。
便宜上T2さんにそこらへんをお話いただきましょう。


T2氏:「株の本は数が多いから売れてるように見えるだろうけど、女性の著者が目立ってるほかは手堅い動きよ。いまは中国株みたいな目玉がないから。

でも『会社四季報』や『日経会社情報』が好調だということは、一般投資家は確実に帰ってきつつある。企業の業績もいいし、株価が上昇に転じる期待感があるんだろうねえ。

これで毎月、日経平均が300円くらいずつ上がり続ければ、本の売行きも上がるんだけどねえ。うちはこれからも株の本は増やしていくよ」


そう期待通りいくのでしょうか。

株がらみではちょっと視点の違う意見をくれた人もいました。
知識は専門家並みのKさん。


T2氏:「株の本はこれからも出るでしょうね。景気回復はどうなるかわかりませんが、ライブドアとフジサンケイグループの問題で、企業買収が現実的な危機感を持って表面化しました。数年後にはさらに買収がしやすくなります。

上場企業が買収を防ぐためには結局各社の株価を高くするしかありません。こうした背景からも株価の上昇は期待できるのです」


相変わらず冷静なコメント。景気が悪くても株価は上がるんですか。


T2氏:「実際どこまで上がるかはわかりませんが、上場企業はこの1〜2年で買収防衛のための準備をしなければなりません。

現状の株価では、非常に不利な企業ばかりですから、まだまだ上がるはずだという期待は今年よりも来年のほうが強くなると思います。期待は株価に反映しますから出版にも影響するでしょう」


へえ〜。


■新潮流はないのか


新会社法関連の新刊はすでに何冊か出ています。

法令施工の一年以上前にも関わらず、注目を集めているということは、施行直前にはかなりの動きが見込めます。

バットをホームベースの上に出しておけば、ボールの方から当たってくれる状況が期待できます。

社労士のかた、行政書士のかた、チャンスです。施行4ヶ月前の発行を目指し、いまから準備しましょう。もうやってますか?

また、Tさんが言われたように来年は70万人近い新卒採用者が企業に入ってきます。新入社員に対するマナーや仕事の基本などというテーマも数年ぶりに復活するかもしれません。

新入社員が入ってくるということは、その指導をする先輩・幹部社員にとっても「部下指導・育成」という懐かしいテーマの本が必要になってきそうですが、どうなんでしょう。

そのへんに詳しいFさんの話を聞いてみましょう。


F氏:「いままではねえ、学生は会社に入るためにうちの本を読んでたのよ。企業に選ばれるためにね。SPIとかって試験は、いってみれば企業の共通一次みたいなもんなんだけど、つまりは足切りに使われていたの。言語能力を測る問題もある。

だから話し方やら日本語やらが売れてるのもわかるよ。日本語はお年寄りの読者が多いらしいけどね。だけど、これからは、学生が会社を選ぶためにうちの本を読むと思う。

就職対策本の傾向は昔とあまり変わってないけど、企業の姿勢が昨年までとガラリと変わってしまったよ。予定人数を採用するのにどこも必死。足切りどころじゃないわね」


じゃあ新人向けの本も伸びますか。


F氏:「数が増えるんだから伸びると見るのが普通だわね。だけど、昔と違ってよってたかって教育研修というのはもう少ないよ。自分で勉強せえって。だからかどうか、せっかく狭き門を通って入ったのに辞めるのも多い。企業もそれはそれでいいと見ている節もある。

入社すれば自動的に一定の社会的ポジションが得られるというのは費えたね。新人は自分で本買って読むんじゃないの。だから新書や文庫みたいな廉価版がいいんだよ」


なるほど。ビジネス書も会社の金で買う時代は終ったのですか。
幹部向けの本はどうでしょう。


F氏:「部下育成の本ってことだろうけど、どうかねえ。部下の指導育成で評価されるなら読むだろうけどさ。いまは自分の力で育ちなさい。育たなければ辞めてもいいよ、というラディカルな空気よ。

成果主義は見直されているといっても、制度をちょっといじってみたところで、小さな本社志向は変わらないんだからさ。幹部だって部下の指導より自分のことじゃないの」


部下より自分のキャリアップだと。


F氏:「部下を育てれば自分のチーム成績が上がる。それが評価されるなら指導育成にも力が入るだろうけど。いまはそういう状況じゃない。むしろ新人や若手が幹部になるために本読むんじゃない」


幹部のための本じゃなくて「幹部になるための」本ですか。


■Mさん、Iさんのご意見


2007年問題を直前に控えて、その方面では動きがあるのでしょうか。Mさん、よろしく。


M氏:「当然用意はしてますよ。企画は言えないけどね。2007年問題といっても実際に定年退職する人は700万人もいない。定年延長もあるし、第二の職場に転職する人が多いからね。

いきなり毎日が日曜日になる人は少ないし、そういう人に対する本はあまり考えていない。ただ、さらに職場に残る人たちも近い将来にリタイヤするわけだから、その後社会へどうコミットするかは真剣に考えているでしょう。

“定年帰農”のようなテーマは何種類か出てくるでしょうし、もっと斬新なものもあるかもしれない」


最後にIさん。年末から来年の企画は?


I氏:「うちは営業・マーケティングのラインナップを揃えていく。それもオーソドックスなやつ。いままでのマーケティング・営業の本はキワモノが多くて短命だった。

短期の部数は落ちるかもしれないが、もう少し長く売れるものでないと経営的にもよくない」


長く売るといっても書店を説得するのは大変でしょ。


I氏:「手堅いつくりで読者は増えていることはデータで示せるし、他社がキワモノで仕掛け来るせいで、棚のバリエーションとして受け入れてもらえそうだ。あとは営業努力」


来年はひょっとしてビジネス書版元に福音がもたらされるのでしょうか。それとも新刊の洪水に呑み込まれるのでしょうか。



    《編集後記》
 
来年の新卒者、70万人弱ですか・・・!私は15年前、求人関係の仕事をしていました。当時の就職バブル⇒就職氷河期を体感してきましたので、ここまで増えたかと感慨ひとしおです。コンサルタントの分野でも、ここ数年は企業研修の依頼が増えていると感じています。この変化の狭間に、大きなチャンスが眠っていると思いませんか?(発行者:樋笠)



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出版プロデューサー/本多 泰輔(ほんだ たいすけ)

プロデューサー・本多泰輔氏は、ビジネス出版社(版元)で20数年の経験をもつベテラン編集者から、出版支援プロデューサーに転身した人物です。その考え方について詳しく知りたい方は、本多氏編集のメールマガジン『コンサル出版フォーラム!本はあなたをメジャーにする』のバックナンバーをご一読下さい。








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