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第050号 『人はなぜ同じ失敗を繰り返すのでしょう
           〜ハズレ企画に見る出版社の性癖』

■ハズレ宝くじ


おはようございます。
本多泰輔です。

少し旧聞に属しますが、昨年末にある著者からクリスマスプレゼントにジャンボ宝くじ10枚をいただきました。

金運に縁遠い人生送っている本多は、宝くじや馬券の類は買ったことがないので、初めての体験に半ば惑乱しながら新年の新聞を開き、一枚一枚精査いたしました。結果、末尾6に該当する券が一枚。総額300円。

「当たったら半分差し上げます」と言って別れたものの、著者のところまで行くにはJRで450円、すでに赤字です。・・・どうしたものかと思い悩んでいます。

さて、私事から入りましたが、つまり「ハズレ」ということをテーマに、今回はお話を進めてまいります。

年の始めから縁起が悪い?
これはそういうメルマガなんです。1月も半分が経過しました。

おめでたい話題にも飽きたでしょうから、この辺でシビアな話題で新年会の酒を抜きましょう。

まず自己批判から。

昨年、本メルマガで喫緊のテーマに「自分の住まい・マンションの構造」を上げました。実際書店にもその種の本をちらほら見かけますが、世間の関心は意外に低いようです。

NHKの世論調査で、耐震偽造の事件に関連して「自分の家の耐震構造が気なるか?」というアンケートをとったところ、一番多い答えが「気にしない」で30%半ば、「気にする」「耐震構造を調べる」と応えた人は10人に1人もいませんでした。

あるいは、これでも従前よりは関心度が上がっているのかもしれません。住宅関連の本が売れないのもむべないことです。日本人は家には執着しますが、家の質には存外関心がないのかもしれません。

我が家の場合、耐震構造等に問題があっても立て直すお金がないので、地震保険にだけ入って真実から目をそむけています。そんな姑息な人間は私だけかと思っていたのですがみんなそうなんでしょうか。

というわけで、本多の言を真に受けて「住宅・マンション」関連の企画を提案されたかた。ごめんなさい。

NHKだけの調査なので、版元には世論調査の結果を知らないところもあるかもしれません。ですから企画としては通る可能性はありますが、どうも売行きは期待できそうにありません。

しかし、この世論調査をもとにして企画したとてハズレるのがまた出版です。


■オリンピックネタ


オリンピックや万博など国際的なビッグイベントがあるときには、必ず関連する本が出版されます。というよりも全媒体、マスコミがいっせいに動きますから、本が出てくるのも当然です。

経済効果、数100億という巨大なイベントです。連日テレビ、雑誌、新聞で報道されていますから世間の注目と関心が高められることは必至。

本だって何冊も出ているわけですから出版界も大繁盛のように見えますが、どうしたことか実際はどれも大して売れません。

点数が多すぎるから売れないということは、出版にはありません。
どの本も平均的に買われるということなど、ありえないからです。

どんなに点数が多くても、一頭飛びぬける本があるものです。
どれも売れないということは、読者がいないということです。

はっきり言うと企画がハズレ。

近いところでは昨年の名古屋環境博、イベント自体は近年にない成功でしたが出版界は無風。旅行ガイドのようなものは地元では売れたようですが、さざ波程度。

関連本全部足しても『さおだけ屋・・・』はいうにおよばず『下流社会』にすら遠く及びません。

こうした誰もが出せば売れるだろうと期待するイベントネタの多くは、惨憺たる有様になることが通例です。

理由は定かではありませんが、私の知る限り「沖縄博」「つくば万博」「大阪花博」「長野オリンピック」・・・、毎回関連する本を出しましたが、どれもハズレでした。

さらに不思議なことには、これだけハズレが続いてもその時期なるとまた出してしまうのです。魅入られるのでしょうか。

余談ですが、1970年大阪万博まではビッグイベントのたびに出版界も潤いました。

特に新聞系のグラフティ誌はオリンピックや万博のたびに大部数を増刷していましたし、書店にうず高く積み上げられ飛ぶように売れました。

多分いまの各社トップ・役員が新入社員のころですね。まだそのころの栄華が忘れられないのでしょうか。

今じゃグラフティ誌そのものがなくなっているのに。


■「新法」関連のハズレ


昨年は『個人情報保護法』『新会社法』と新法関連の本は、まずまずの動きを見せました。

新法や法改正は、ビジネス・法経関連の出版社にとってはお上がくれたチャンスといっても過言ではありません。

しかし、どんな法改正でも、あるいは新法だからといって、いつでも読者は手にとってくれるかというと実はそうでもありません。けっこう無関心に通り過ぎてしまうケースも多い。

例えば「労働法改正」は2〜3年に一回は行われますが、いまだにベストセラーは昭和40年代初めに一度あったきり、その後二度とありません。

「男女雇用機会均等法」は世間の騒ぎの割りに実売に貢献せず。

「時短」はけっこう健闘しましたが、ベストセラーというほどには至らず。「セクハラ」「パワハラ」などは週刊誌の揶揄記事どまり。

バブル末期に「相続税」が変わったときも本はたくさん出ましたが、お金持ちは自分で本など読まずとも顧問弁護士、税理士、または銀行がついてるので、期待したほどには売れませんでした。

新法といえども例外ではありません。

「環境新法」「家電・自動車リサイクル」や「包リ」などは、そもそも出版界さえ見向きもしませんでした。「健康増進法」にいたっては私などその成立さえ知らずにおりました。

私の記憶では、新法本でもっとも華やかだったのは【消費税導入】の88年末〜89年3月ですね。

10月までは世間の話題にはなっていてもそれほど大きな動きはなかったものが、11月に日本実業から消費税入門が出て急激に市場が盛り上がり、次々と類書が発行されました。

そして約3ヶ月間熱を帯びたような動きを示し、3月をすぎるとパタと売行きが止まる。その極端さが印象深く残っています。

今回の『個人情報保護法』も同じ動きでした。

ただ、昨年の「個人情報」と昭和の終わりの【消費税導入】との違いは、前者は日経の一人勝ちであったのに対し、後者はトップは先行した日実であったものの2番手3番手もベストセラーに名を連ねた、裾野の広い現象であったことです。

もはや利益が業界全体に及ぶというようなマーケットはないのかもしれません。


■話題性のハズレ


話題性は高いのに本はさっぱりということもあります。
冒頭お詫び申し上げました「マンション・住宅耐震問題」。

姉歯元建築士、ヒューザー小嶋社長、総研内田社長と魅力的なキャスティングで観客の目をそらすことのないドラマが展開されますが、「マンションの選びかた」「耐震住宅の作りかた」というテーマには発展しそうないことが、世論調査で明らかになりました。

だからといって本が出てこないということではありません。
本はこれから出てくると思います。ヒモつきも含めて。

でもハズレでしょうねえ。

「姉歯の告白」という本ならベストセラーねらえるでしょうが。私個人的には、だまされた側のホテル経営者の話を聞いてみたいです。

年金問題もあれだけマスコミを賑わしながら、出版物としてはどれも振るわず。「401K」はすこし動きがありましたが短命でしたし、その他は書店にあっても新しい本が出てくるまでの流通在庫。

トヨタが高級車戦略レクサスを発表したとき、同時に某版元もレクサス本を出したのですが、これはハズレでした。

話題の行列ができるラーメン屋の本を出したビジネス書の版元がありましたが、やはりラーメンは食うもんで読むもんではなかったようです。

話題性で売れた本で、最近の顕著な例は一連のホリエもん本でしょう。次から次へと出てきた本がすべて売れたかどうかはわかりませんが、一種のブームでした。

とはいえやはり短命です。


■まとめ


今年になって日経から郵貯関連の新刊が出ていますが、他社は追いかける様子もありません。

いかなるテーマでも新しいものには手をつけるというリーディングカンパニー日経の矜持に頭が下がる思いです。

今年もトリノオリンピック、来年に迫った2007年問題、上昇を続ける株と中国と石油の値段、とテーマは実に豊富です。

新会社法の施行でまたビジネステーマは増えるかもしれません。

まあ、売れる売れないの予測は人智を超えたところでしかわからない、しかし出版社が飛びつきそうなテーマは、やはり話題のテーマであり売れそうなテーマです。

ハズレを繰り返しているということは、それが飛びつきたくなるテーマであるということですから、死屍累々たるハズレ企画をながめることもまた編集部攻略上は意義あることといえます。

でもやはりどうせ出すなら売れたほうがいいですけど。


    《編集後記》
 
ハズレは出版だけでなく、ビジネスにもつきものですね。ネタを5つ仕込んで、ひとつ当たればいいほうでしょうか。宝くじは、確率から見てもまさに「神頼み」ですが、出版デビューの道は、たとえ一時ハズレ(不採用)の結果でも、確実に当たりへ近づいていくと思います。仕込みつづけるのが肝心ですね(発行者:樋笠)



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出版プロデューサー/本多 泰輔(ほんだ たいすけ)

プロデューサー・本多泰輔氏は、ビジネス出版社(版元)で20数年の経験をもつベテラン編集者から、出版支援プロデューサーに転身した人物です。その考え方について詳しく知りたい方は、本多氏編集のメールマガジン『コンサル出版フォーラム!本はあなたをメジャーにする』のバックナンバーをご一読下さい。








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