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第062号 『著作権と引用、それぞれ踏み越えてはいけない一線』


おはようございます。
本多泰輔です。

先日、本メルマガの読者にお会いし、いろいろ感想をお聞きしました。

曰く「もう少し読者に夢と期待を抱かせる内容にしたほうがよいのではないか」「土井さんのところは随分繁盛している。見習ったらどうか」(土井さんってだれ?)とか親身なご意見をいただきました。

他にも意見としては「出版界の裏側を暴け」とか「どうせ辛口でやるなら、もっと徹底的に批判してしまえ」などというラヂカルなのも頂戴しました。じゃあそうしようかなーと一瞬思いましたが、やっぱり好みじゃないので止めました。正確には、やろうと思ってもできないのです。

だいたい出版界の裏側も八百屋の裏側も畢竟人間のやることですから、そこに大層な違いがあるわけではありません。食品にたずさわる分だけ八百屋の裏側のほうが重要です。

そういう人の営みの裏側を曝してみても「当たり前」のことばかりで、ことさらに面白がるほどのこともないかなと思います。それでも著者サイドが出版社に対する「善意の勘違い」をしているケースも見受けられるので、これまで「当たり前」のことをいくつか披瀝してきました。

さらにインサイダーに踏み込んで

「印税はどなたでも最高10%、新人著者では5%程度と言ってるが、MHには12%払っている」

「出版社の経常利益はほとんど在庫だ」

なんて話を書いてもつまんないでしょ。

あるいは面白いと仰る読者がおられるかもしれませんけど、なにぶん書いてる本人がつまらんものですから、やっぱり書けません。小説なら書けるかもしれませんが、これはメルマガですから。

裏側といえば東洋経済が出した『食品の裏側』、ビジネス書ではないですがベストセラーに上がってきましたね。『粗食のすすめ』以来でしょうか。

『買ってはいけない』に較べると著者のスタンスが落ち着いていて、一概に企業悪を煽るようなつくりではありません(その割りにタイトルはセンセーショナリズム)。

真面目な業界人らしい真摯な内容です。
各業界でこうした本が出てくればと思います。


■著作権とは


さて、本日のお題「著作権」です。実は先週の「校正」の流れで、もう少し触れておこうと思いました。

さらに詳しくお知りになりたい向きは、ちゃんとネット上でも著作権法が閲覧できますのでしっかり条文を読んでいただければと思います。※こちら 

そもそも著作権とは何でしょう。条文にはこうあります。


一.著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

二.著作者 著作物を創作する者をいう。


文章に限らず、映像、音楽に著作権があることは皆さんご存知でしょう。あまり知られてない、というか気づいてないところでは、講演にも著作権があります。

つまり「いい話だったから自分も使おう」と気楽にパクって講演でしゃべってしまうと著作権の侵害となります。

講演の場合、聴衆が限られますし、聞いても忘れてしまいますからあまり問題になることはありませんが、かなりいろんなところで、いろんな人がお互い侵害し合っているのじゃないでしょうか。

有名人の話は「だれだれさんがこう言った」と出所を明らかにしますが、あまり有名ではない人の話だと出所を省いて話してしまいますしね。私の場合ですが。

そんなわけですから、侵害されることを考えると知らないうちに随分侵害されているかもしれませんね。ノウハウなんてうっかり人前でしゃべれませんね。気をつけましょう。

さて、それじゃあ他人が書いたもの、しゃべったものは一切アンタッチャブルなのでしょうか。

文化というものはそんなケチな料簡ではありません。原則として公共の利益に供するものに著作権のしばりは緩やかです。

学校の教科書で、何年か前に乱用を制する判決が出ましたが、あれは版元があまりに著者に対して杜撰な対応をしていたためで、教科書を売って利益を得ている出版社が断りもなく勝手に作品を使うことを戒めたという極めて当然の話です。

情報は常に共有化の方向に進みます。


■引用も過ぎると


個人の場合でも引用という手段が許されています。

第三十二条(引用)公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

引用がすべてOKなら、糊とはさみでコピーを切り貼るだけで一冊出来上がり。著者は楽なもんです。

でも引用する以上出所は明らかにしなければなりません。
出所を明示せず使用すると、それは盗作、剽窃となります。

第四十八条(出所の明示)次の各号に掲げる場合には、当該各号に規定する著作物の出所を、その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、明示しなければならない。

条文はあいまいな記述ですね。引用がわずかであれば出所を明示しなくてもよいようにもとれます。

現状ビジネス書では「孫引きの孫引き」で引用文は出所不明、捜索不能というような状態ですので、よほど「大量にひとつの本から」抜かなければ、まず発覚することもありません。

それでも引用は出所を明らかにしましょう。
それが著者の矜持というものです。

しかし出所を明示したら後はやり放題かというとそうは問屋が卸しません。問題解決技法にKJ法というのがあります。

KJ法は著作権者の意思で、勝手に使って研修を行うことはできないし解説することもできません。出所を明らかにしただけではダメなのです。

トヨタのカンバン方式のようにオープンにしている手法もありますが、一般にはノウハウ手法は保護されるべきもの。著作権法はかいくぐれても不当競争防止法や知的所有権等に守られています。

引用する相手に一言挨拶しておけば確実ですが、そこまでやっちゃあいられないという場合はとにかく担当編集者に相談しましょう。

ついでに申し添えておきますと、安易な引用でつくられた本は、まず売れません。だから出版社も扱いたがりません。原稿はできるだけオリジナルが望ましいところです。

ところでさっきから気楽に条文を引用してますが、法令はいくら引用しても著作権法に抵触いたしません。出所は明らかですし。


■著作権の及ぶ範囲


報道が伝える部分で事実(後で虚偽だったなんてことはありますが)の部分は著作権の枠外です。ただし報道でも映像は出所を明らかにするだけでは使えません。使用料を取られます。

ホームDVDから勝手にダウンロードして使うとお咎めがあるかもしれません。ま、使用料払えば済みますけど。

ところで、著作権の有効期限は著者の死後50年間です。
つまり本人がなくなった後も著作権は生きています。

では権利はだれにあるか。
相続者にあります。

税金はかかりませんが財産といっしょです。ですから相続者がいない場合には国庫に行くことになります。

もし、あなたが亡くなっても著作権は立派に有効ですので、みだりに侵害されないようしっかりと相続者に遺言しておきましょう。著作権の保護は自国民に限られます。

ですからWTOに参加していなかった以前の中国では(ひょっとすると加盟した現在でも)、外国人の著作権を顧みる必要がなかったので、海賊版といわれる勝手に翻訳された本がたくさんありました。

いまは不法になったのですが、相変わらずたくさんあります。日本だと(多分中国でも)不当競争防止法違反ですが、コピー商品も多いですね。SONNYとか、HONGDAとか。


■まとめ


ネット上の文章や情報にも著作権はあるはずですが、映像、音楽を含め「こんなの見つけました」とあちこちを渉猟して情報を切り取っている検索エンジンみたいな人がいて治外法権のようです。

有害情報、違法情報の取り締まりもできないのに著作権云々などと言っても、信長じゃないですが「是非もなし」というところでしょうか。著作権の下に出版権の条文があったので、見ていたらこんな文言がありました。

「複製権者からその著作物を複製するために必要な原稿その他の原品又はこれに相当する物の引渡しを受けた日から六月以内に当該著作物を出版する義務」

原稿受け取ったら半年以内に出版しなくてはいけないらしいですが、これ守ってない人はけっこう多いはずです。原稿渡してからボツにすることもあるし。

仕事の遅い編集者にはそれとなく「こういう条文もあるんですねえ」と圧力をかけてみるのも面白いですね。

勝手に原稿を送り込んで、出版社がほおっていたのをいいことに、半年後に「早く原稿を本にしろ」と乗り込んでいくというのも考えられますが、ま、出版の義務が発生するのはあくまでも出版権を設定したらの話ですので。

そういうこともあってか編集が出版契約書を持って来るのはたいてい発行後です。これはちょっと裏側の話でした。

ではまた来週。



    《編集後記》
 
今週は著作権がテーマでした。最近は硬派なテーマが続いていますね。わが道をいくという感じでしょうか。しかしこれまた大事なテーマです。私も昔、出版関係にいたことがあり、引用を含めて著作権には厳しく言われてきました。

とくに日経新聞の引用なんか、手軽に(勝手に?)やっている方もよく見かけますが、きちんと許可を申請したりけっこう面倒だったと記憶しています。最近はブログなどで気軽に情報発信できるようになった分、無責任な引用をしたりしないよう、慎重に心がけたいですね(発行者:樋笠)

 



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出版プロデューサー/本多 泰輔(ほんだ たいすけ)

プロデューサー・本多泰輔氏は、ビジネス出版社(版元)で20数年の経験をもつベテラン編集者から、出版支援プロデューサーに転身した人物です。その考え方について詳しく知りたい方は、本多氏編集のメールマガジン『コンサル出版フォーラム!本はあなたをメジャーにする』のバックナンバーをご一読下さい。








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