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第168号 『カツマーvsカヤマー』

おはようございます。
本多泰輔です。

今年は景気回復するとかしないとか、諸説入り乱れていますが、出版界全体としてはどうにも回復の兆しは望めそうもありません。

今年も何社かが倒れるでしょうし、統廃合、業界再編もまた一段と進むのではないかと予想されます。

これはもはや時代の趨勢、抗いがたい傾向なのではないでしょうか。

そんな中、気を吐いているお二人、カツマーこと勝間和代さんとカヤマーこと香山里香さん。

勝間本の勢いは周知の通りですし、対する香山本も『しがみつかない生き方─「ふつうの幸せ」を手に入れる10のルール』(幻冬舎新書)は昨年のベストセラー、さらにこのお二人の対談『勝間さん、努力で幸せになれますか』が朝日新聞から出版されました。

しがみつかない生き方─「ふつうの幸せ」を手に入れる10のルール
勝間さん、努力で幸せになれますか

冷え切った出版界にあって、このお二人の周辺だけは妙に熱い。

少々意地悪く見れば、両者のポジションは、カツマーという素材を料理するカヤマーという構図で、結局のところ料理は素材しだい、つまり良くも悪くもカツマーという素材に頼り切っている。

カツマーという素材に、人を惹きつける強いパワーがあるということなのでしょう。

そうして見ると『しがみつかない生きかた』もある意味で一種の勝間本かもしれません。そもそもそのタイトル「・・・幸せをつかむ10のルール」なんてところからしてもカツマーっぽい。

ところで、このお二人に共通することが一つあります。本当はもっとたくさんあるのかもしれませんが、わたしはあまりこの人たちのことを知らないもので、一つしか気がつきませんでした。

その共通点とは、どちらも本の出版頻度が高い。

カヤマーの頻度は、高いとはいえさすがにカツマーには及びませんが、それでも普通の著者から見れば新刊から新刊の間がかなり短い。

要するに次々と新刊が出る。
それもあちこちの版元から出る。なぜか。


■知識という資産

あちこちの出版社からお声がかかり、常に相当数のバックオーダーがあって、それでいて受けた仕事は律儀にこなし、しかも出した本がかたっぱしから売れている。あるいは売れているように見える。

一年のうちに何冊も本が出る理由とは、まずそういうことでしょう。
バブルとは言いませんが、景気が過熱しているときの状態ですね。

こういう時は、物価高、インフレの懸念がありますし、過剰投資、過剰在庫が発生しがちです。あくまで一般経済の場合ですが。

われわれからすると「よく書くことがあるなあ」という具合に見えますが、『筆談ホステス』と違って体験談ではありませんから、情報や知識は「他人から借りてくる」こともできます。

著作権法で許される枠内であれば、知識や情報はいくら借りても賃
貸料が発生することはありません。そこが出版のいいところですね。

なんだかんだ著作権がうるさいといったところで、他人の書いた本を読んで得た知識を元に「オリジナル」の本を書くことができるのですから。

他人の意見をベースに、その上に自分の意見を構築していくという作業で本をつくるというのは正当な著作の作法であり、もともと多くの本は、小説も含め、古今東西そのようにして今日に至っているのです。

他人の意見に自分の意見を加えて、自分の本にする。こう書くと、なんだかひどくよこしまな印象ですね。でも、多かれ少なかれ、一冊の本は他人の知識や意見をベースにつくられています。

よく考えてみれば、他人から教えられたものでなく、大自然から啓示を受けたこととか、突然天からの声が聞こえて得た知識というのは少ないでしょう。

わたしの場合には、一つもありません。
知識のほとんどが、本か先輩か先生からです。

つまり、よく本を読み(雑誌でもいいですし、ネットでもいいんですが)、よく人の話を聞いていれば、書くことは尽きない。それが出版するに値するものか、生涯の代表作になるだけのものかは別に、原稿枚数を重ねることは可能です。

逆に、いつも同じ人に会い、同じことを話し、本はめったに読まないとすれば、やはり書けるネタは少ない。最悪一つだけです。
それは自身の半生記のみ。

そういうわけで、本を書く人は、やはり本を読みましょう、というお話でした。


■カツマーとゆとり世代

朝日新聞の週刊誌「AERA」1月25日号に「職場で暴走中・偽カツマー」という記事がありました。

偽カツマーの特徴は
・ビジネス書をたくさん読んでる
・仕事に自己実現を求める
・できる自分を周囲にアピール
・スキルアップに熱心

そして、自己チュウとか。
要するに勝間本を「誤読」している人たちなのだそうですが、職場にはそういう「道を誤ったカツマー」が急増中なのだそうです。

実は、カツマーとほぼ同じ傾向を持つ人たちがいます。
いわゆる「ゆとり世代」のかたがた。

彼らの特徴は
・自分はいつも勉強していると周囲にアピール
・仕事は自己実現の手段
・面接・プレゼン大好き
・自己評価が過剰に高い

そして、当然自己チュウ。
誤読かどうかはともかく、勝間本を支えている読者層は、20代のこうした「意欲的な」人たちなのかもしれません。

さて、本は売れれば著者に印税が入ってくる。
勝間さんも香山さんも同様です。

その印税ですが、多くの人は本を出せば必ず入ってくるものと思っています。「夢の印税生活」なんて、かつてこのメルマガのPRに使われていたこともあります。しかし、現実は多くの人の期待どおりではありません。


■いまどきの印税事情

おそらく勝間さんと香山さんの印税率は同じだと思いますが、すべての著者が同じ印税率であるとは限りません。

はっきり言って、すべての著者に対し同じ印税率で支払っているところのほうが少ない。多くの出版社は、著者によって印税率を変えています。

また、印税率だけを比較しても支払条件の良し悪しはわかりません。

印税率が同じでも、計算の根拠が刷り部数なのか、実売部数なのかによっても支払条件は大きく変わってきます。

印税の話はずいぶん前にやったことがありますが、まあ、何度やってもいいでしょう。

仮に定価1,000円の本を初版6,000部発行したとします。
出版社はケチで有名な会社で、印税率は7%でした。

刷り部数方式の場合、印税は定価1,000×7%×6,000部=420,000円です。安いですね。さすがケチで有名な出版社です。

次に別の出版社から、やはり1,000円の本を出しました。

今度の出版社は、やたら見栄っ張りの会社なので、いきなり初版1万部からスタートです。いまどきにしては豪勢ですね。やはり見栄っ張りです。

しかし、意外と細かいところでは渋くて、印税率は8%で実売方式の支払いでした。精算は3ヶ月後です。3ヵ月後の返品在庫と出荷数で実売部数を計算します。

3ヵ月後、悲しいことに結果は返品率50%、初版で1万も出せばこのくらいのことはよくあります。

そうすると印税は、定価1,000円×8%×5,000部=400,000円、なんと印税率7%よりも安い。

そのうえ支払いは3ヶ月遅れ、けちな会社のほうがまだましでした。

なかには印税率5%で、半年後に精算という実売方式をとる超つわ
ものの出版社もあります。こうなると書くだけ損、という気もしますが、どうなんでしょうね。

それでもなんでも売れれば儲かるわけですが、本が売れて一番儲かるのは構造的にいって間違いなく出版社ですから、著者もすこし考えたほうがよいかもしれません。

それはともかく、では、どこの印税が何%で、実売なのか刷り部数なのか、そのへんのところが知りたくなるでしょう。

が、いくらなんでもそこまでここで詳らかにすると、わたくしのお仕事に影響いたしますので、慎重に取り扱いたいと思います。

ただ、一般的にいえば、だいたい規模の大きいところのほうが、支払条件はよい。

もちろん例外もあります。

わたしの知る中で、もっとも支払条件の渋い会社は、決して小さな会社ではありません。だから儲かっているのでしょうけど。

なぜ、大手のほうが支払条件がよいのか。

その理由については、また次回に。


■経営改革クラブ

ここからはPRです。
「経営改革クラブ」というものをつくろうと考えています。

国会に似たような名前の議員会派がありますが、わがほうは政治団
体ではありません。大雑把に言うと「著者バンク」。人材バンクならぬ著者バンクです。

出版プロデューサーとして、コンサルタントの方の出版のサポートをやっておりますが、そちらは最初に本を出そうという人がいて、その人にあわせて企画をアレンジします。

一方、出版社に対し、「こりゃいけそう!」という企画を持ち込むこともあります。こちらは、まず企画があってそれから必要に応じて著者を立てます。

こうしたオリジナル企画の著者候補を多数登録した著者バンクが、すなわち「経営改革クラブ」です。

テーマによっては、単独著者ではなく、経営改革クラブ著というのも考えています。

もちろん、実際に執筆あるいは情報提供をしていただいたかたの名
前は奥付に記しますが、特定の人物だけが書いたのではないという
場合には、経営改革クラブの名称を著者にする、まあ「編集部著」
という類のものですね。

そんな風にすることで、高い専門性がありながら、一冊すべてを書くとなると負担という方にも出版のチャンスが増えますし、こちらとしても扱うテーマを拡げることにつながります。

そういうわけで「経営改革クラブ」、よろしくお願いいたします。




   《編集後記》
 
弊社に小林という取締役がおりますが、彼のマージャン仲間であった友人が、某有名出版社の編集者でして。彼が先日道でばったり会
って話を聞いてみると「本が売れない」症状は相当深刻のようです。

私も、売るのがうまいあの出版社まで…?と感じた次第です。すでに出版経験のある方や事情通の方はお分かりかと思いますが、今後は著者としての出版戦略を根本から見直す必要がありますね。(発行者:樋笠)




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