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二代目への継承はビッグチャンス
第2回 「二代目のジレンマ」

WellSpring  武井 一喜

世代交代:二代目社長の悩み


若い二代目経営者の方から、よくこんなご相談を受けます。

「 社長に就任したものの、幹部は相変わらず会長(父親)の指示で動いている」

「会長(父親)と意見が合わず、社員の前では意見の違いを表面に出さないようにしているが、社員は感じ取っており、困惑しているようだ」

「会長(父親)の兄弟(叔父)の処遇に困っている」

「自分は父親のようなカリスマ性はない」

多くの場合、これらの問題の背後には、私が「二代目のジレンマ」と呼ぶものが関係しています。


二代目経営者のジレンマ
 


二代目経営者の難しさは、ビジネス上の、上司・部下/先輩・後輩の関係と、親子、父対息子の関係が共存することです。

経営者としてのアイデンティティーと、息子(又は父親)としてのアイデンティティーが、時として葛藤を起こすのです。

表面的な意見の食い違いや親子げんかなどは、目に見えてわかりやすいものであり、当人も問題として認識しやすいものですが、なかなか意識に上らない、無意識におきる問題があります。

今回は、その無意識に起きる、『二代目経営者のジレンマ』を扱います。
二代目社長のこの根本的なジレンマは、潜在意識のレベルで葛藤になっています。

そのジレンマとは…


●後継者として、時代の変化に対応し、会社を伸ばし発展させるために、先代社長が築いてきたものを改革したり、時には、否定しなければいけない。

●一方で、自分は父親の「いい息子」でなければならない。父の期待に応える息子でなければいけない。従って、父親の築いてきたものに手をかけてはいけない。
 

こんな葛藤が、心の底で起きることが多いのです。
このような葛藤は、なかなか顕在意識に上ってきません。

しかし、必ず大きな影響があるものです。

例えば、何か新しいことをしようとした時に、良いアイディアにも関わらず、理由もなく「でも、きっとダメだな…」と思ってしまうといった、止める気持ちが湧き起こったり、習慣になっていることで、利益に結びつかないようなものを敢えて見過ごしていたり、そんな形で無意識に働いています。

そんな時に、父親の声がふと聞こえたり、父親の顔がちらりと思い浮かんだり、父親そのものでなくても、父親を象徴するようなもの、例えば、父親が育てた人間だったり、父親が懇意にしている得意先だったり…そのような象徴がふとよぎり、決断に影響することはないでしょうか?

事が無意識のレベルで起きるだけに、影響を受けていることに気づかない場合が多いのです。また、気づいたとしても、「受け継いだものを変えてはいけない」、と感じてしまう場合が多いのではないでしょうか?

このような葛藤を解消し、自分の無意識の父親像から開放される方法はいろいろあります。私のコンサルティングでは、様々な手法で、これを解決していきます。

この紙面でお伝えできる方法としては、「墓参り」または、「親孝行」です。

かなり宗教っぽい話になってしまっていますが、私は宗教家でも、道徳家でもありません(笑)。
おおまじめに言っています。

私が寝具問屋の商品企画を担当していたとき、父が育ててきたブランドを廃止した事があります。

そのブランドは、かつては大きな売上を上げていたのですが、ブランドイメージが陳腐化しており、そのときには既にお荷物になり、在庫処分が利益を圧迫していました。

私は、この件について、何ヶ月も悩んでいました。

その頃に父と私と弟たちとでゴルフをする機会がありました。父は大のゴルフ好きでしたが、私は下手くそ。しかし、そのゴルフでお互いが心から楽しみました。父の嬉しそうな顔は今でも思い出します。

不思議なことに、その後すぐに、私はブランドの廃止を決断できました。ゴルフをしながら父とこの件を話したわけではありません。私の中で何かがすっと通った感覚がありました。

私にとっては、父の大好きなゴルフに付き合うことが、当時できる最高の親孝行だったと思います。

他にもこのような体験を何度かしているうちに、親孝行は、自分の為にするのだと発見しました。親孝行とは、実は自分が親の呪縛から逃れ、自由になる為の行動であると。

あなた独自の「親孝行」は、無意識の父親の呪縛、『二代目のジレンマ』から逃れることができる有効な方法のひとつです。


背後にある肯定的な意図を満たすこと


これには心理的な理由があるのです。

セラピーのスキルの中に、否定的な行動(A)の奥にある「肯定的な意図」を見出し、その肯定的な意図を満たす、問題がおきない別の行動(B)をとることで、否定的な行動(A)を止める、というものがあります。

ビジネスにとって障害になる「父親の良い子」になってしまう行動を、別の行動をとることで肯定的な意図を満たし、ビジネスにとって必要な判断に邪魔が入らないようにするのです。

『二代目のジレンマ』に対して、「親のよい子であらねばならない」という無意識のレベルの信念・思い込みを、親孝行の行動を取る事で満足させるのです。

すると、仕事の上で親が悲しむかもしれない(と無意識に思っている)行動が、抵抗無く取れるようになるのです。

お父様がすでに他界された方には、墓参りをおすすめします。

墓参りによって、あなたの中の「親の良い子」を満足させ、仕事の上での決断には、あなたの中の無意識にある親の像が、口をはさませないようにすることができるのです。

あなたは、自分の力で、見えない呪縛を取り去ることができるのです。



■バックナンバー

第1回 「社長は社員の鏡」
第2回 「二代目のジレンマ」
第3回 「親の七光りは利用しろ」
第4回 「なぜわからない人にはわからないのか?」
第5回 「後継者の成功の鍵“スポンサーシップ”」
■武井 一喜/WellSpring  代表    http://www.wellspring.co.jp
武井 一喜/WellSpring 代表
1956年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、キャラクター商品の製造販売会社で営業マンとして勤務。ニューヨークのコロンビア大学でMBAを取得。マーケティングとファイナンスを専攻。帰国後、家業である商事会社で商品企画と経営企画を担当。業績悪化を受け、経営効率化のためのリストラプランの策定、実施。新規事業としてライフスタイル提案型生活雑貨店チェーンの本部会社を社長として設立、運営(現在50店舗加盟)。その後、家業の商事会社(年商130億円)の社長に就任するも、1年後に廃業。現在は 中小企業経営者に対する事業継承の支援を主な活動としている






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